森の書庫

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中医臨床のための中薬学 /神戸中医学研究会

生薬を入り口にして発展的に中医学を理解する

著者は長年、中医学を研究している「神戸中医学研究会」のグループです。
本書は中国伝統医学を、「生薬」という観点からまとめたものです。

「神戸中医学研究会」は、中医学がほとんど知られていなかった1970年代から40年以上もわたって活動してきた団体です。
貴重な原書を取り寄せ、手分けして翻訳書を書き下ろし、古典解説書を執筆するなど日本の中医学研究をリードしてきました。
執筆メンバーは日本人医師、中国人医師、薬剤師らが名を連ねていました。

本書は「中医薬」を総合的に学べるように配慮されたガイド本です。
総論では中薬の歴史、治療効果と関わる薬性理論、薬の形態や製造過程などがまとめられていました。
各論では「生薬」を解表、清熱、行気、理熱などの効能に基づいて分類して掲載していました。
各生薬については、イラスト、気味、効能などについて解説されていました。
方剤について項目を設けられていないのですが、生薬から方剤へと発展的に理解できるように工夫されていました。
たとえば「桂枝」の「発汗解肌」の性質から派生して、発汗がある際は衛営調節の芍薬を加えた「桂枝湯」を、発汗がない場合は発汗を促す麻黄を加えた「麻黄湯」を使う、などとしていました。

本書はこのように「方剤」を構成する「生薬」を入り口にして、中薬学を理解できるように工夫されていました。
日中の違いなどについても詳細に記載されていて、長年のノウハウや知見が結実していることが伺えました。
中医学を深く学べる好著だと思います。