森の書庫

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総合診療徹底攻略 100のtips 根本 隆章

必要十分な情報が詰まった総合診療のテキスト

 

著者は医師の根本隆章氏です。
本書は総合診療に関連する様々な症例を解説したものです。

根本氏は大学卒業後は総合診療医としてキャリアを重ね、現在は感染制御科で臨床に立ちつつ、後進の指導にも力を注いでいます。
本書は著者が実際に経験した症例から総合診療に関連した100のものをピックアップしたものです。
章は、呼吸器、循環器、消化器、神経、代謝・内分泌、血液、腎・泌尿器、膠原病感染症、精神科、薬剤性疾患などで区分されています。
研修医との対話から既往を確認し、診断をつけるまでの流れが1つのトピックにつき3−4ページ程度で収められていました。
掲載症例の中では、次のようなものが印象に残りました。

・高熱の大学生が、生肉によるカンピロバクター腸炎だったこと。
・夜間咳嗽(がいそう)が、逆流性食道炎によるものだったこと。
・拡張期高血圧が副腎のアルドステロン(鉱質ステロイド)症由来と見抜いたこと。
・時々起こる下腹部痛が、尿管膜遺残だったこと。
・歩行障害が、銅欠乏症や、頭痛薬による小脳症状だと見抜いたこと。
・微熱と顎の異常が、巨細胞性動脈炎だと見抜いたこと。
・繰り返す伝染性単核症が、HIVによるものだと見抜いたこと。
・多発性塞栓症を人工血管の感染症が原因だと見抜いたこと。

イラストなどは少ないもののCT画像などが掲載され、参考文献も明示されるなど、必要十分な情報がコンパクトにまとまっていると感じました。
また薬の副作用について造詣が深い点も印象的で、わずかなヒントから鮮やかに診断する様子はミステリー小説のようで引き込まれました。
総合診療について概観できる好著で、オススメです。