森の書庫

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漢方治療44の鉄則―山本巌先生に学ぶ病態と薬物の対応 坂東 正造

病名漢方という概念

漢方の名医と言われた故「山本厳医師」の漢方処方の理論を、弟子の坂東医師が著したものです。
山本氏は日本漢方、中医、現代医学の3つの分野を広く学び、独自の理論を構築して治療に当たっていました。

本書では病態にあわせて山本氏が処方していた方剤や、処方のヒントとして「山本厳先生語録」として同氏の肉声が掲載されていました。
山本氏は伝統中医学で用いられる「証」に頼らない、「病名漢方」という分野を確立しようとしていました。
これは「証」が曖昧で、個人的な経験に左右されやすいことなどを理由として挙げていました。
また書中の「エキス剤程度の量では十分な効果は望めず、処方すべき量はずっと多くなければならない」や、「漢方は本来即効性があり、処方が合っていれば15分程度で効果が出る」というのは驚かされました。
漢方を扱う専門家にとって本書から得るものは非常に大きいと思いました。