幸せになる技術―心の目覚めのための21のエクササイズ /スリクマー・S. ラオ
手のひらにある幸せに気づくために
著者は米国コロンビア大学ビジネススクールの客員教授「スリクマー・ラオ氏」です。
本書は同大学で開講されている「幸せのための戦略」講義を文字起こししたものです。
ラオ氏はインド系のアメリカ人で、幼少期はミャンマーで過ごすなど、東洋にルーツを持っています。
大学時代は物理学を専攻し、卒業後は企業でのコンサルタントを勤めながら「幸せのための哲学」を体系化しました。
そして大学に戻ってそれらを講義したところ評判となり、受講者が殺到する人気となっています。
本書はそのコロンビア大学MBAスクールでの講義を本にしたもので、次のような内容でした。
「この世界は幻で、自分なりの世界観で『解釈』しているに過ぎない。
幸せな世界を望むなら、今より『ちょっと』マシな現実を本物のように演じることだ。
初めは演技でも大丈夫。これから少しずつ現実になっていくのだから。」
「自分や他人を裁き、動揺を誘う『心のお喋り』に常にさらされていることを知る必要がある。
このお喋りに惑わされず、心を今に集中し、丁寧に、几帳面に毎日を過ごしなさい。」
「世界は心にあるものを引き寄せ、実現していく。
例えば恋人が欲しいなら、『そのような自分』になるよう力を注ぐ必要がある。
欲しいものがあるなら、『それを持つにふさわしい自分』になるよう努力しなさい。」
「『心からの感謝』を抱くことを日常の習慣にしなさい。
ありがたいと思うことが多くなると、ありがたいと感じる出来事も増えていく。
一方でネガティブな発言を口にすると、そうした出来事が起こるので注意しなさい。」
本書の内容は、古来から聖人、宗教家、宇宙人(?)たちが繰り返し語ってきたことで、目新しいものではありません。
しかし白眉なのは著者が自身の経験や様々な喩えを引きながら巧みに解説していることで、心に響きました。
これが実業界のリーダーを育てるMBAで講義されていることを思うと、ユニークな試みだと思います。
本書の冒頭で、目指すべきリーダー像を次のように示していて印象的でした。
「真理を知るリーダーが目指すのは、『奉仕』であって自己の利益追及ではない。
こうしたリーダーは、自分だけの利益よりも万民の幸福を優先することで成長する。
逆説的だが、無私になることでかえって自己を向上させるのだ。」