森の書庫

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新・医療ビジネスの闇: “病気産生”による日本崩壊の実態/ 崎谷 博征

著者は総合内科医としてクリニックを運営する医師です。
自身がガンや難病患者と向き合う中で感じた疑問点を、世界中の医学文献や資料などに当たりながら丁寧に調べ上げていました。
その結果、底が見えないほど深い闇の奥を覗いてしまい、戦慄しながらもまとめたものが本書です。

 


個人的に感銘を受けた内容を列挙します。
・批判の矢面に立たされる医師や病院の後ろにある巨大なシステムこそが問題。
・削減される医療費の中で唯一高騰を続けている薬代とその背後にいる薬剤メーカー。
・製薬、石油、金融機関は三位一体で支配体制を構築している現状。
・近代医療という名の下に医療行為を独占してシステム化を進めた黒幕の存在。
・薬は急性症状緩和には役立つが、長期的に完治に導くものは1つもない。
・新薬の臨床実験は援助の名で途上国で行なわれてきた。
 途上国でない日本は属国ゆえにタミフル子宮頸癌ワクチンが押し付けられている。
・治療ガイドラインの薬剤選択は編集委員の多数決で決められ、エビデンスと無関係。
エビデンスの拠り所となる一流紙の掲載論文は資金供出する薬会社の意向が反映。
・医師は抗癌剤が効かないことを知っているので、自分は抗癌剤を受けない。
複雑系が司る人体は近代医学で治療はできない。

現代医療の抱える様々な問題点は断片的に語られることがあっても、歴史、経済、資本家、世界などの多面的な視点からアプローチしたものは少なく、そうした点から本書の持つ意義は非常に大きいと思います。
こうした書籍を発表する多大なリスクを承知の上で出版を決めた現役医師の勇気は素晴らしいと思います。
そして苦しみにあえぐ日本が、グローバル化によって一層の危機的状況を目の前にしている現在、本書は必読だと」言えそうです。