森の書庫

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ベロボディアの輪―シベリア・シャーマンの智慧 /オルガ カリティディ

著者のオルガ・カリティディ女史はロシアの国立病院に勤務する精神科医で、現在はアメリカに在住しているようです。
本書は病院勤めをしていた著者がシベリアにあるアルタイ地方のシャーマンと関わりを持つことになり、葛藤しながらもヒーリングの力を学び取っていくというもので、ノンフィクションの形式をとっています。
なお表題の「ベロボディア」は、アルタイ地方のどこかにあるという伝説の聖都の名前です。

著者は94年当時に30代で、ロシア中央に位置するノボシビルスク国立病院で、精神科医として勤務していました。
ある時、連邦内のアルタイ地方の若者ニコライが患者として来院してきたことが、運命を変えるきっかけとなりました。
不思議な力に導かれるようにして若者の故郷に訪れ、シャーマン「ウマイ」との邂逅を果たします。
そこで不可思議な出来事を経験し、次のような神秘的な啓示を授けられました。

「この世界は幻で、現実とは自ら意図して創造したものであるにすぎない。
 人は生きている間に、現実と自分自身を完璧に作り上げなければならない。」

啓示を達成するためには、人生で行う選択が意識的になされなければなりません。
具体的には、真理、美、健康、幸福、光の全てが揃うというものです。
この選択を続けることで、心の奥深くの「精霊の湖」にいる「魂の双子」という「真の自己」との統合が進みます。
その結果、周囲の雑音に煩わされず、超然として態度で人生に臨めるようになるとしていました。
また「魂の双子」には治療者・教師・戦士など7つの性質があって、「胸のあたり」に存在していることなども印象に残りました。
他にも著者の精神科医としての仕事に関連する啓示もありました。
たとえば人が狂気に至る理由は、「魂の一部を失うこと」と「外部の精神体から寄生的な憑依を受けていること」の2つを挙げていました。
こうした啓示を受けて著者の治療は変わって行き、劇的な回復へと患者を導いていきました。
そして終盤になると、彼女に起こった全てのエピソードは壮大な「ベロボディア」という物語を紡ぎあげてきた、という気付きを得ます。

本書で語られる物語は、訳者あとがきにもあるように南米のシャーマン世界を描いた「カルロス・カスタネダの著作」とよく似た世界観だと感じました。
著者は本書で描かれた気付きを元に、世界のシャーマンを訪ねるなど真理の探究は今なお続いているようです。
著者の「その後」は英語版の「The Master of Lucid Dreams」などにあり、読んでみたいところです。