森の書庫

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瞑想のススメ 山田 孝男

著者は18歳の頃から瞑想について探求した人物で、本書は74年に出版されたものを改訂して99年に発刊された分にあたります。
当時は精神世界を扱ったものは非常に少なく、その完成度の高さからロングセラーとなって版が重ねられたということです。
これまで瞑想というと「心を落ち着けるテクニック」という程度の知識しかなかったのですが、本書を読んでその奥深さ、深淵さに圧倒されました。

 本書では、瞑想が求める究極の目的は「真の自己にたどり着くこと」だとしています。
そのために常に頭の中で喋り続ける思考の声を静めて、真の自己がささやく小さな声に耳を傾ける必要があります。
その過程で現れてくる感覚の先鋭化、感情の変化が著者の体験を踏まえて詳細に語られ、先哲たちの著書を紐解きながらその世界観をわかりやすく解説してくれていました。
それら「言葉の馴染まない世界」のあれこれを、苦心して言葉に翻訳しながらまとめ上げられた文章は詩的で美しく、心に響きました。


・この世界は心の想念で作られたもので、原因は外ではなく内にあります。
 体験する自己があって初めて世界は存在するのです。
・心を沈めて深奥の意識が表れると、私達は相対世界を超えた存在だと知覚します。
・本当の師は外に求めるのではなく、自己の内にこそ求めるべきです。
 これは体験によって得られた確信です。
・瞑想によって自己の本質を知ると、智恵の目が働き始めます。
 すると人生は完全な真我が不完全な芝居を演じていることがわかってきます。
 喜びも悲しみも芝居の一場面と知ったなら、演じ方も変わっていくでしょう。
 芝居をじっくりと味わいつつも、囚われることなく生きていけるのです。

また、瞑想の助けとなる様々な方法論も語られています。
眉間にある霊眼の開発、胸にあるという真我を認識する方法、夢を利用したもの、色の助けを使ったもの、鍛錬が進む過程で現れるリスクへの対処など多岐に亘っていました。
そして読了後に振り返ってみると、本書で語られる瞑想の究極の到達点は、仙人やシャーマンたちが最終的に求めたものと同じであることを感じました。

本書はこうしたことを実践者の息吹と共に感じさせてくれるとても興味深い本です。
残念ながら著者は既に帰幽されているようですが、この著者の本をもう少し読んでみたいと思いました。