森の書庫

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マジカル・チャイルドの記憶/山田 孝男

著者である山田孝男氏、本書は瞑想による世界探求に至るまでの来し方を語っていました。

 著者は普通の家庭に生まれましたが、幼い頃から自然への畏敬と興味を持ち、空想の旺盛な子供だったようです。
想像の中で絵の中に入ったり、病気に苦しむ中で死を思いながら、日常の外にある別世界を意識していました。
青年になってからは神秘学に傾倒し、インドネシアの「スブド」という修行団体に入門したり、LSDなどの薬物を利用して不思議な世界を体験しました。
その間、異世界の探求では薬に頼らず瞑想を使うのがよいと思い立ち、その道を生涯にわたり追求しました。

個人的に特に印象に残ったのが次のようなものです。

・ヘッセの著書「シッダールタ」で「内なる神」のことを知った。


・瞑想中に他人のオーラが心と連動して幸・不幸の引寄ることに気づいた。

・催眠誘導でトランス状態に導くと、叡智を感じさせる別人格が表れた。
 そして患者の病気の原因や、「著者」の未来を正確に伝えられた。
 こうしたチャネリングでは質問の内容が重要となる。
 陳腐な質問だと答えも陳腐なものしか返ってこない。
 深遠な問いで答えを得るには、術者の精神も深みに達する必要がある。

・著者はある時、身一つでおカネを全く持たずにお遍路体験を成し遂げた。
 この経験からカネがなくても人の善意を受け入れれば生きていけると知った。
 まず生きようとする強い意図を持ち、天の意図を信頼して受け入れればよい。
 すると自然に生かされるようになり、必要なお金は色々な方法で与えられる。

・瞑想の中で、システムには依存せず、内的導きに従うのが正しい道だと確信した。
 それは1人で歩き、いつか目的地に立てるという自己への信頼から生まれた。

・著者はインド旅行中に「真の自己は胸の中心から少し右にある」と知った。
 ここを意識して瞑想すると、記憶と、観察する自己が別だと理解した。
 そして意識を観察者側に移すと執着や囚われから離れられることをも知った。

本書は著者の実体験に基づいた話が具体的に語られているので興味深く、読了まであっと言う間でした。
また本書で述べられている世界は、気功家や呪術師などが語るものと同じであることを実感しました。
たとえば自身を導く不思議な力はカスタネダの力の話(新装・新訳版)などにある「意図の力」であり、この世が幻想であることはシッダールタやあの世に聞いた、この世の仕組みなどでも指摘されています。

そして本書の白眉は、執着を捨て去った山田氏のその後の変遷が描かれていることです。
著者は神秘家として生きることを決め、宇宙の真理に沿って生きることを基本としながらも、見かけ上は普通の生活を送ろうとしました。
しかしこの世が幻想であると認識する者からすると、悩んでいる人は芝居を本気で演じている役者にしか見えず、また世間はその流れと異なる著者のスタイルを異端として絶えず攻撃してくるのでわずらわしさを感じました。
その狭間で試行錯誤しながらも折り合いをつけ、この死の瞬間まで見続ける一時の夢を、楽しみながら生きることを学びました。
これこそがもう一つの悟りであり、胸打たれました。