森の書庫

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あるがままに生きる / 足立 幸子

著者は元々インテリアのデザイナーとして活躍していましたが、何かに導かれるようにして絵を描き始めました。
学校で学んだり、誰かに師事していたわけではなく、本当に突然書き始めたようです。
しかしその絵には時に人を癒し、モノを変化させる不思議な力があったことから個人的な依頼が殺到し、デパートでの個展や講演活動を行なっていましたが、残念なことに93年に脳梗塞で帰幽されました。

 本書はその講演を文字起こしして、編集したものです。
まず冒頭に著者の作品のカラー写真が掲載されていました。
抽象的でシンプルなもので、気ままに筆を落としたようにも見えるのですが、不思議な味があり、調和を感じさせるものでした。
本書は著者が「どのように絵を書いているのか」を切り口にしながら、「直感に導かれて人生を歩む方法論」を示そうとしているようでした。
例えば、著者の絵の描き方は次のようなものです。


「今からこの紙に『こういうテーマで絵を描く』と一瞬思います。
 そしてボーっとしていると『ここにこういうのを描くみたい』と閃くのです。
 こうして書き始めて『次、どうするのかな』と思うと、また閃く。
 この繰り返しで、絵になっていくのです」

著者によれば、人は心の奥で「神我」という全能の意識にリンクしているので、こうしたいという希望を「意図」して、受身になっていれば答えが返ってくる、というのです。
他に強く印象に残った項目を列挙します。
・神我の答えを求めてボーっとしている時、意識は胸のあたりにあります。
 ここに意識があると腹が立たず、物事をあるがままに受け入れられます。
 これは良い悪いや好き嫌いを頭で考えず、自分の尺度で判断しない、ことです。
・胸に意識を置くのが上手になると静かに観察するもう一人の自分を自覚します。
 そしてその存在が表に現れてくると、感情に振り回されなくなります。
・仕事は楽しくてたまらず、相手に喜ばれ、おカネが入るのが最高なのです。
・仕事や住居で「潮時かな」と感じたら、欲は出さずに直感に従うべきです。
 そうでないと宇宙との調和が乱れることになります。
 そういう「お試し」という試練はレベルが上がると頻繁に訪れてきます。

このような「心の奥の小さな声を聞く」ことの大切さは神秘家やシャーマンらが繰り返し語ってきたことで、著者は素のままでそうしたことを体得したことが伺えて驚かされました。
そして経験から紡ぎ出される、借り物でない言葉は説得力があり、胸打たれました。