森の書庫

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総合診療医が教える よくある気になるその症状 レッドフラッグサインを見逃すな! /岸田 直樹

調剤薬局での症候診断ガイド

著者は総合診療、感染症を専門とする岸田直樹氏です。
本書は調剤薬局の服薬指導を想定した症候診断マニュアルです。

著者は北海道で生まれ、函館ラサールから東工大に進学します。
のちに旭川医大を再受験し、卒業後は内科・感染症を専門にキャリアを積みました。
現在は総合診療科へウィングを広げて活躍していて、本書もその一端として執筆されました。

本書は、薬剤師が患者さんに対して行う症候診断のために編集されたテキストです。
薬剤師を対象に「薬局でよく尋ねられる症状」と「薬局で尋ねられて困る症状」についてアンケートをとり、上位となった症状を取り上げていました。
具体的には、風邪、痛み(頭痛・膝痛・腰痛)、消化器症状、めまい、倦怠感です。
5項目というと少ない印象ですが、それぞれ丁寧にまとめられて奥行きを感じさせるものでした。
特に感染症は著者の専門なので、わかりやすく説明されていました。

巻末には付録として、OTC薬の成分一覧が掲載されていました。
風邪薬、解熱鎮痛薬、鎮咳去痰薬、胃腸薬、止瀉薬を、指定第二類と第二類の医薬品からセレクトしていました。
例えば風邪薬だと「エスタックイブ」はNSAIDsとしてイブプロフェン、抗アレルギー成分としてクロルフェニラミンマレイン酸塩、鎮咳のコデインエフェドリンなどが含まれていることが一覧となっていました。
漢方成分も麻黄・甘草・柴胡などリスクのある生薬を含めて一目でわかる様に整理されていました。

全体の構成は講義形式をとっていました。
各章の目的が最初に示され、初めに前回の復習が添えられ、読者の疑問に答えるように展開するというものです。
まるで対話のように進むので、飽きずに読み進めることができました。
文章も基本を大切にしながらも応用の効く知識が、豊富な症例と共に披露されていました。
薬剤師だけでなく、広く医療関係者にとって役に立つ内容だと思います。